小麦をまるごと挽いた粉が生む、
奥行きのある味わい
全粒粉で焼いたパンやお菓子には、
ほかの粉にはない甘みと香ばしさがあります。
焼き上がったときの、こんがりとした香り。
噛むほどに広がる、やさしい甘さ。
それは、小麦をまるごと
挽いた粉だからこそ感じられる、
奥行きのある味わいです。
欧米では、全粒粉を使ったパンやお菓子が、
日常の食卓にあたりまえのように並び、
香ばしくて腹もちのよい
素朴な味わいが好まれています。
けれど日本では、
まだ“健康志向の人が選ぶ粉”という印象が
強いかもしれません。
本来、全粒粉は体によいから使うのではなく、
味を生み出すための粉。
使い方次第で、パンもお菓子も、
まったくちがう表情を見せます。

小麦一粒のうち、白い胚乳(薄力粉になる部分)がおよそ八割。
残りの二割ほどを占める胚芽とふすまに、香りと栄養のほとんどが詰まっています。
薄力粉はこの部分を取り除き、扱いやすく軽やかにした粉です。
全粒粉は、その削られた部分ごと、丸ごと挽いた粉になります。
また、全粒粉にも「薄力タイプ」と「強力タイプ」があります。
小麦の品種によって、用途を使い分けられます。
同じ全粒粉でも、目的によってまったくちがう顔を見せてくれます。
今はたんぱく質ブームの時代。
だから「全粒粉はたんぱく質が多い」と聞けば、体に良さそうに思われます。
けれど、そのたんぱく質は数字ほどには働きません。
ふすまや胚芽がグルテンの形成を妨げるため、生地はふくらみにくく、粘りも出づらくなります。
そう、なんだかずっしり重たく硬いパン、思い当たりますよね。
ミネラルや脂質が多い分、香りと味の厚みは増しますが、その分だけ扱いには工夫が必要です。
全粒粉とは、栄養を残す代わりに、手をかけて向き合う粉なのです。
グラハム粉は、普通の全粒粉とは挽き方の順番がちがう粉です。
まず胚乳だけを細かく挽き、あとから胚芽とふすまを別に粗く挽いて混ぜ戻します。
同じ「まるごと使う」でも、粒の細かい部分と粗い部分がはっきり分かれています。
そのため、口あたりは軽く、香ばしさが前に出ます。
グラハムクラッカーやグラハムブレッドの独特の歯ざわりは、
この二段階の挽き方から生まれるものです。
精白した粉は軽く、丸ごと挽いた粉は重くなります。
けれど、重たい粉でしか出せない香りと甘みがあります。
焼き切るほどに香ばしく、噛むほどに味が深まります。
最終的に、どんな食感を求め、どんな香りを残したいかは作る人次第です。
混ぜる粉の配合、焼きの強さ、焦げ目のつけ方。
その選択のすべてに、その人の“味”が宿ります。
全粒粉は、作り手の感性がいちばん現れる粉。
食べ手にとっては、知らない世界をのぞくような粉。
そんな粉が、全粒粉です。
>次のよりみちノートは、
全粒粉をもう少し気軽に。
まじめでも、なんとなくでも、おいしくなる話。
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