クッキーの話をしようと思うと、
少しだけ手が止まることがあります。
クッキー、と一言で言ってしまえば簡単ですよね。
けれど、それが何かと聞かれると、国によってずいぶん見ているものが違うようにも思えてきます。
同じように、小さくて、手でつまめて、
甘くて、焼いてある。
見た目は似ているのに、
どこを見てそれを呼んでいるのかが違う。
少し横に並べてみると、
面白いことが見えてきます。
日本では区分の基準があります。日本ビスケット協会が定めているもので、ビスケット類の中でも、糖分と脂肪分の合計が全体の40%以上であること、そして外観や品質として手作り風であること、この二つを満たすものをクッキーと呼ぶ、という考え方です。
数字の条件と、見た目や仕上がりの条件。その両方で区分されているところを見ると、きっちりとした基準でありながら、どこか感覚的な部分も残されているようにも感じられます。
けれど、その基準が日常の中でそのまま使われているかというと、そこはまた少し違う。売り場に並ぶものや、普段の会話の中では、もう少しゆるやかに扱われていることも多いですよね。
アメリカでは、クッキーという言葉はとても広く使われています。
丸くても、四角でも、大きくても小さくても、しっとりしていても、少し乾いていてもいい。
チョコレートが入っていたり、ナッツが入っていたり、何かが混ざっていることも多いですよね。
やわらかさを残したものもあれば、軽く乾いたものもある。同じクッキーの中に、いくつもの質感が並んでいるような感じです。
どちらかというと、「どう食べるか」というよりも、「どう楽しむか」に近いのかもしれません。
形や作り方よりも、手に取って、そのまま食べられるという気軽さのほうが前に出ています。
イギリスでは、自分たちのものはビスケットと呼んでいて、クッキーという言葉は、アメリカからやってきたものを指すことが多いように感じられます。
紅茶と一緒に並ぶことを前提にしているようで、薄くて、均一で、ほどよく乾いているものもあれば、バターの割合が高く、しっかりとした口当たりのショートブレッドのようなものもあります。
単体で完結しているというより、飲み物と並んで落ち着く。そんな立ち位置に見えることがあります。
フランスになると、さらに呼び方が細かく分かれていきます。
サブレ、ガレット、ビスキュイ。それぞれに名前があって、それぞれに理由があるようです。
バターの入り方や、生地の作り方、焼き上がりの構造。
そういうものが、そのまま名前になっていて、同じように見えるものでも、ひとつの言葉にまとめずに、その違いをそのまま残しているようです。
北欧では、小さな焼き菓子はたくさんありますが、それらは特定の言葉ひとつで括られるというより、季節や習慣の中に置かれているようです。
冬になると並ぶもの。コーヒーの時間に添えられるもの。いくつかの種類が少しずつ並んでいる光景。
一つひとつの名前はあっても、それ以上に「その時間の中にあるもの」として存在しているようにも感じられます。
こうして並べてみると、同じような焼き菓子でも、見ている場所が少しずつ違うように思えてきます。
何を入れるかを楽しむ。何と一緒に食べるかを考える。どう作られているかを大切にする。いつ食べるかを考える。
クッキー、という言葉でひとまとめにしていたものの中に、こんなふうにいくつもの見方が重なっているとしたら、少しだけ面白くなりませんか。
同じ形の中に、違う考え方が入っている。そう思ってもう一度見ると、いつもの焼き菓子も少し違って見えてくるかもしれません。
ひとつに決めきらなくても、そのまま受け止めてしまえる。その感じも含めて、このお菓子の懐の広さのようなものが見えてくる気がします。
でもそんな事は置いといて。
クッキー大好き。
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