前回お話したようにパウンドケーキは、
四つの材料を同じ分量で
合わせるところから始まります。
今回は、その先の「製法」のお話です。
同じ材料、同じ分量。
それなのに、出来上がるパウンドケーキは
ひとつではありません。
軽かったり、しっかりしていたり、
しっとりしていたり。
材料を変えていないのに、印象が変わる。
ちょっと不思議に感じるかもしれませんが、
作り方を見ていくと、
「ああ、なるほど」と思うところが
出てくるかもしれません。
まず、バターと砂糖を混ぜ、たっぷりと空気を含ませます。
白っぽく、やわらかくなったところに卵を加え、
最後に粉を合わせていく。
パウンドケーキの製法として、いちばんよく知られている方法です。
ただ、バターと同量の卵を使う配合では、
ここで生地が分離しやすくなります。
卵を加えるタイミングや、バターの状態によっては、
少し難しさを感じることもあるかもしれません。
この製法では、最初に含ませた空気が生地を押し上げる力になります。
そのため、本来は膨張剤を使わなくても成り立つ作り方です。
とはいえ、スポンジケーキのように大きく膨らむわけではありません。
より軽さを出したいときや、仕上がりを安定させたいときに、ベーキングパウダーを少量加えることもあります。
うまくいけば、きめの整った軽やかな仕上がりになります。
その一方で、途中で生地が崩れると、その良さも失われやすい。仕上がりの美しさと、扱いの繊細さが同じ場所にある製法です。
材料を、最初からまとめて合わせる方法です。
「合わせる」というのはたとえば、すべての材料をフードプロセッサーに入れて、ガーッと、ムラがなくなるまで回す。
それだけで生地が完成します。
空気を含ませることは考えず、均一に混ざっているかどうかだけを見ていく作り方です。
この同じ考え方の製法違いが、マドレーヌ法です。
卵と砂糖をホイッパーでぐるぐると混ぜ、そこに粉と膨張剤を加えて、さらに混ぜる。
最後に、溶かしバターを加えて、もう一度ぐるぐる。これで生地は完成です。
工程は少なく、途中で状態が大きく変わることもありません。
膨らみはベーキングパウダーに任せ、分離といった失敗も起きにくい。簡単ですよね。
特別なコツがなくても、生地はちゃんとまとまります。
普段あまりケーキを作らない方でも、「これならできそう」と感じる場面かもしれません。
仕上がりは、シュガーバッター法とは少し違う方向に向かいます。
空気による軽さは控えめで、全体は落ち着いた質感。ふくらみ方も均一で、揃った印象になります。
膨らみを、最初から膨張剤に任せる。そんな考え方に立った製法です。
もうひとつ、少し違う考え方の製法があります。
先に、バターに粉を混ぜてしまう方法です。
砂糖や卵より前に、まず粉。少し意外に感じるかもしれません。
バターに粉を加えて混ぜると、粉は油脂で包まれます。さらさらした粉の状態とは、少し違う感じになります。
そのあとで、卵と砂糖をあらかじめ混ぜたものを加えて、生地をまとめていく。空気を入れることよりも、生地を落ち着かせることを先に考えた作り方です。
この方法では、粉が先に油脂となじんでいる分、生地が締まりにくくなります。焼き上がりは、ぐっと立ち上がるというより、しっとりと、なだらかな印象になることが多い。
軽さよりも、口当たりのまとまりを大切にしたいときに選ばれる製法です。
ただ、混ぜ具合が足りないと、焼き上がったあとに粉っぽさを感じることもあります。
途中で生地の様子を見ながら、「あ、ここまでかな」と止める。そんなコツが必要になってきます。
同じ配合でも、空気をどう扱うか、膨張剤にどこまで任せるか。
その選び方で、仕上がりの方向は少しずつ変わります。
軽さを取りにいくのか。安定感を選ぶのか。
それとも、口当たりを整えたいのか。
製法は、その選択が形になったもの。
そんなふうに見えてくるかもしれません。
次回は「パウンドケーキ、今日と明日と。」
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